【書籍】家族小説「さくら」と『ロンの思い出』
前から読もうと思って、我が家の本棚で待機していた『さくら』(西加奈子著)を
ここ数日で一気に読み終えた。
背表紙のコピーは「どこまでも、まっすぐに届く家族小説」
帯にづらづらと書いてあった感動とはまた違ったけど、
読んでる最中からずっと、物語の進行の裏番組のように、
自分の幼少時代が進んでいった。
蛍光灯で明々と照らされた狭いけど母の手料理が並んだ食卓と
寝返りをうてば、必ず家族の誰かにぶつかった(我が家は3
人兄弟)川の字のお布団。怖くてたまらなかった洋服ダンス
の木目の模様。
中学2年生のとき、両親が念願の一軒家を建てた。
私にも初めての自分の部屋ができた!嬉しくてたまらなかった。
友達と二人で生まれたての犬をもらいにいった。「まえまえ」
というあだ名の可愛い友人は、すぐに一番器量のいい白い犬を
選んだ、「じゃ、あたしこっちでええわ」私の選んだ、黒い犬
は、あまり器量よしじゃなかったけど「ロン」という名前をつ
けられ、明石家(旧姓)で家族の一員として長く君臨する。
(ちなみに器量よしの白い犬は、身体が弱く子犬で死んでしまった)
大学から東京で一人暮らしをして、だんだん家に帰らなくなった。
それでも「ロン」は、1年ぶりに帰る私にも、懐かしい匂いを感じて
すぐしっぽをふってくれたっけ。
「ロン」は、いついなくなったんだっけ?(死ぬ前に姿を消したらしい)
10年くらい前に、父が具合が悪くなったとき、何を思ったか
『ロンの思い出』という私小説を書いた。
ああ、家族の真ん中に、お前はいたんだね。。。。
小説『さくら』は、そんな記憶を呼び起こしてくれる、
そんな、どこにでもありそうな。懐かしい、切ない、匂いのある、小説です。
これから、家族を持つ人や
とくに、赤ちゃんの誕生を待ってる人が読むと、とても響くと思います。